[メイン2]
獅童真希 :
夕暮れの刻。空に広がる薄暗い雲の群れ。
遠くに見えるビル群のシルエットが、どこか虚しく見える。
[メイン2]
獅童真希 :
人の暮らしていたであろう形跡のある、冷たく静かになった街の中。
道路の向こう側から、足音。
[メイン2]
獅童真希 :
橙色の空と、背丈の高い短髪の人影が、揺らめき。
腰には、異様な存在感を放つ暗器─────御刀が添えてあった。
[メイン2]
獅童真希 :
その者の顔が明らかになるにつれ、その哀愁はより深く、鮮明となる。
怯えなど一つも見せない、悠然として……尚且つその瞳には、悲しみと怒りが現れているように、光を伴わず、不動。
[メイン2] 獅童真希 : 「……………………。」
[メイン2]
獅童真希 :
腰に添えた御刀をいつでも抜刀できるように、手をそこへ乗せながら。
ピリピリとした敵意を放ちながら、周囲に存在するやもしれない『同類』の気配を探知し続ける。
[メイン2] 獅童真希 : …………僕は……この戦いで……勝たなくちゃ、いけないんだ……。
[メイン2]
獅童真希 :
獅童真希は、折神家親衛隊の一人、第一席に着任し
日々荒魂と戦う刀使の指揮を執る重鎮の一人である。
[メイン2]
獅童真希 :
そして─────刀使として育ち、共に歩んできた仲間を守るために
強さだけが取り柄の自分に居場所を与えてくれた、親衛隊の皆のためにも
学園で、自身を慕ってくれる皆の者達のためにも。
[メイン2] 獅童真希 : 『強さ』を、ひたすらに追求し続け─────。
[メイン2] 獅童真希 : ─────荒魂の源泉たる"ノロ"に身を染め、人間としての領域を優に超えた力を手に死。
[メイン2] 獅童真希 : 己がどう傷つこうとも、仲間を守るため、そして自分という存在を………生きる理由を守るためにも、その刀を振るい続けた。
[メイン2]
獅童真希 :
折神家の大義を理由に、非道に手を汚したことも……ある。
しかしこれは、強さのため、そして仲間のためであり………。
……と、自分に言い聞かせ続けてきた。
[メイン2] 獅童真希 : ………でも、僕は……。
[メイン2] 獅童真希 :
[メイン2] 獅童真希 : 失った。
[メイン2] 獅童真希 :
[メイン2]
獅童真希 :
僕にとっての『強さ』の象徴であり、追い続ける背中であり
そして、共に日常を過ごす仲間であった、燕結芽の死。
[メイン2]
獅童真希 :
結芽は、若き天才ながらも、どこか子どもっぽいところもあり
そんなところに、日々『強さの探究』に押しつぶされそうになっていた心が、癒されけきた。
[メイン2] 獅童真希 : でも
[メイン2] 獅童真希 : 死んだ。
[メイン2] 獅童真希 : ………分かっている、分かっているさ。
[メイン2] 獅童真希 : "ノロ"による延命に過ぎなかったのは、知っている。
[メイン2] 獅童真希 : それでも……それでも、僕は……駄目なんだ………。
[メイン2] 獅童真希 : ……耐え切れないんだ……。
[メイン2] 獅童真希 : ………君を、生き返らせる。
[メイン2] 獅童真希 : それが、僕の『望み』だ。
[メイン2]
獅童真希 :
僕は、この世界のことなど、何も知らない。
ただ……隔世の神秘性は、僕も知っている。
[メイン2]
獅童真希 :
僕達が刀使としてあり続けられるのも、そして荒魂が現れ続けるのも
全ては、現世と隔世の繋がりがあるからだ。
[メイン2]
獅童真希 :
その存在が明らかになっていても、深層理解にはまだ届いていない。
僕達が知っているのは、氷山の一角に過ぎないと述べる専門家もいる。
[メイン2] 獅童真希 : ……ならば、ならば、だ。
[メイン2] 獅童真希 : ……僕は、死んだ者が生き返る手段だって……あって、いい……。
[メイン2] 獅童真希 : そう、思うんだ。
[メイン2] 獅童真希 : 隔世ならば……遠く、どこかに、結芽の魂が、あるのかもしれない。
[メイン2] 獅童真希 : だから、それを取り戻しさえすれば、きっとまた結芽は、僕のもとへ─────。
[メイン2] 獅童真希 : あの、無邪気な笑みを、見せてくれるはずなんだ。
[メイン2] 獅童真希 : だから………。
[メイン2] 獅童真希 : 「……何が何でも、僕は、この戦いで、勝つ」
[メイン2] 獅童真希 : 冷たく、低い声で、そう呟いた。
[メイン2] 獅童真希 : ……獅童真希、推して……参る。
[メイン2] 獅童真希 : ………例え、"誰が"相手でも………斬って、みせる、さ。
[メイン2] 獅童真希 : ……誰であっても……子どもであっても……絶対………。
[メイン2] 獅童真希 : ぎゅっ。
[メイン2] 獅童真希 : もう片方の拳を、硬く、握り締めた。
[メイン2] 獅童真希 : 決意を表明せんとばかりに。
[メイン2] 獅童真希 : 険しい表情で、獅童真希は、眠る街の中を歩き続けた─────。
[メイン2] 獅童真希 :
[メイン2] 獅童真希 :
[メイン2] 獅童真希 :
[メイン2]
櫻 美鳳 :
「はぁ~ ご丁寧にウチの愛する生命線まで持たせてくれとるとは思わんかったわ~手間が省けたっちゅーより まぁこんな場所で金なんて調達できへんしなぁ」
銀色のアタッシュケースを運びながらウチは歩を運ぶ。
[メイン2]
櫻 美鳳 :
景色がどれだけ後ろに吸い込まれようと
どこもかしこも文明の抜け殻や
[メイン2]
櫻 美鳳 :
使えそうなもんは何にもあらへん
障害物や遮蔽物ぐらいの役割しか果たせへんやろうな
[メイン2]
里見 灯花 :
ふわり、と一本。
傘が宙を舞う。
[メイン2] 里見 灯花 : ぱかり、と傘が開き────
[メイン2]
里見 灯花 :
そこからに美鳳放たれる、鮮やかも熱々しい、熱線。
[メイン2]
櫻 美鳳 :
「!!? おわっ……とぉおっ!!!」
何や? と思うとったらパカァー! と開いた傘から
こんがり焼けそうな熱線───……!!
[メイン2] 櫻 美鳳 : ウチは
[メイン2] 櫻 美鳳 : ……ってこんな所で終わるかいっ!
[メイン2]
櫻 美鳳 :
咄嗟に躱して
すぐにまた傘の方に目線を送った
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「な なな……なんやっ!!? 今の……」
[メイン2] 里見 灯花 : 傘は、それを放つと……光の粒となり、消えていった。
[メイン2] 里見 灯花 : 「……わお、ぼーっとしてたのに、今の避けるんだね」
[メイン2] 里見 灯花 : メイフォンの空から声が届く。
[メイン2]
櫻 美鳳 :
「!」
飛翔しとる……いや浮遊しとるんか……? どっちでもええ!
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「そりゃあんなん来よったら 誰だって咄嗟に避けるに決まっとるやろ!」
[メイン2]
里見 灯花 :
その視線の先には、傘で……”飛ぶ”少女の姿が。
メイフォンからすれば、自分よりも小さい少女であろう。
[メイン2] 里見 灯花 : ふぁさ、と地面に着地し。
[メイン2]
里見 灯花 :
「うんうん、わたくしの攻撃、見切ったのはあなたが初めてです!
誇っていいよ!」
ぱちぱち、と手を叩きながら。
[メイン2]
櫻 美鳳 :
額から汗が滲む
けれどこれを拭ってたら、またいつこんがり焼かれそうになるかわからへん
ウチはアタッシュケースの『ロック』をさりげなく解除する。
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「……な ナーハッハッ! 誇ったるわ! ってそうはなるかい!」
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「殺す気やったんやな……!」
[メイン2]
里見 灯花 :
「…………?」
あれ、何か……した…?
[メイン2] 里見 灯花 : 「まあね、だって……」
[メイン2] 里見 灯花 : 「そういう場、でしょ?」
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「………まっ」
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「そりゃそうや」
[メイン2]
里見 灯花 :
にこり、と笑う。
その笑顔には、純粋さすら見えて。
[メイン2]
櫻 美鳳 :
「別に戦いに礼儀だとか作法だとか必要とはウチも思わへんし」
けど、あの笑顔……正直気味が悪いわ……!
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「でも ウチは戦いを楽しもうとは思っとらんねん」
[メイン2] 里見 灯花 : 「だよね……なら…」
[メイン2] 里見 灯花 : 「へえ…そうなの?」
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「そうや!」
[メイン2] 里見 灯花 : 「そうなんだ……自分の力を試せるのって、愉しくないの?」
[メイン2] 里見 灯花 : 手に持っていた傘を閉じ、杖代わりに立てて。
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「いやーもうそれはもう飽きるほど試した事があるもんで……あんさんとは違ってなぁ」
[メイン2] 櫻 美鳳 : その時、ロックが解除されたアタッシュケースが開き。
[メイン2] 里見 灯花 : わたくしに与えられた「魔法少女」の力、これを使うのはかなり…”楽しい”。
[メイン2]
櫻 美鳳 :
そこには───まあ驚くやろな
傍から見りゃこれはこの場には相応しくない『武器』や
『武器は武器でも……天下の武器』
[メイン2] 里見 灯花 : 「……そうなんだね、珍し……!?」
[メイン2] 櫻 美鳳 : 金。
[メイン2] 櫻 美鳳 : 敷き詰められた札束。
[メイン2]
里見 灯花 :
……今の話し合いで、時間を稼がれた……!?
ま、何が来てもわたくしには……
[メイン2] 里見 灯花 : 「……お金」
[メイン2] 里見 灯花 : 「え、もしかしてわたくしをばいしゅーするとかでもないよね」
[メイン2] 里見 灯花 : きょとん、とした顔で首をかしげる。
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「何考えとんねん この金はウチの金や」
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「うちの為に使うもんなんやから 買収も一切考え取らんで」
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「まあ仲良うしとくれるんなら 分け前としてやるのはアリやけどな」
[メイン2] 里見 灯花 : 「へえ…あなた自身のための、ねえ」
[メイン2]
里見 灯花 :
「…じゃ、お金さん!
おあいにく様だけど、わたくしは……仲良くする気はないかなあ?」
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「まぁ もともと交渉はしてないも同然やけど 交渉は決裂やな」
[メイン2] 里見 灯花 : ぴし、と傘の先をメイフォンに向けて。
[メイン2]
櫻 美鳳 :
ウチは───札束を一束だけ、むんずと鷲掴んで
[メイン2]
里見 灯花 :
「交渉はねえ、同じ立場に立ってからするものなんだよ?」
と言いながら。
[メイン2] 里見 灯花 : その傘の先に熱量がたまっていき────
[メイン2]
里見 灯花 :
……お金を…握った……?まさか盾にでもするつもり?
そんなんじゃ防げないよ……!
[メイン2]
櫻 美鳳 :
「地に足つけてくれとるんやから 同じ立場には立っとるようなもんやけど……って上手くもなんともあらへんか」
また撃ってくる───なら……やることは一つや。
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「ウチはな 愛しとるんや……『金』を」
[メイン2]
櫻 美鳳 :
「守銭奴と言われるぐらいにはな でもそれは褒め言葉やウチにとっての…」
そのままウチは、札束に頬ずりをして
[メイン2] 櫻 美鳳 : 口づけする。
[メイン2]
里見 灯花 :
「む……」
確かにわたくしとお金さんは、同じ場所に立っている……
[メイン2] 里見 灯花 : 「……わっ、好きって言ってもそこまで…… …?」
[メイン2] 櫻 美鳳 : 刹那、ウチの身体も札束から───閃光。
[メイン2] 里見 灯花 : その仕草に違和感を覚え、目を見開く。
[メイン2] 里見 灯花 : 「わっ……!?」
[メイン2]
櫻 美鳳 :
「いやぁ~ ホンマ……まさか……この力がまた身に宿るとは思わんかったわ」
光が晴れると ウチの姿は……『あの時』のように……変わる事ができていた。
[メイン2] 里見 灯花 : 光に目がくらみ、そこにあった────『姿』に、驚愕する。
[メイン2] 里見 灯花 : しかし、それを払うように傘から一閃の光線が放たれる。
[メイン2]
櫻 美鳳 :
華奢な身体を包む───アーマー
けれどただ包んだんやない いや正確には包んだというのも正しくはあらへん
[メイン2] 櫻 美鳳 : なぜなら ウチ自身が
[メイン2]
里見 灯花 :
「……っ、何をやったのか知らないけど……」
お金の力で…変身した?
[メイン2]
櫻 美鳳 :
轟ッッ!!!! 地を踏みしめれば
亀裂が広がり、跡を残しながら急接近ッッ!!!
[メイン2] 里見 灯花 : そんなの、見掛け倒しのただの────
[メイン2]
櫻 美鳳 :
ぶき
『人間兵器』になったんやからなッ!!!
[メイン2] 里見 灯花 : 「っ……!?」
[メイン2] 里見 灯花 : その急接近に、ふわりと慌てて浮遊する。
[メイン2] 里見 灯花 : 「…ごめんね、お金さん!あなたの力……判断不足だったよ!」
[メイン2]
櫻 美鳳 :
「見掛け倒しと思うたやろっ! 逆にそっちは見た目に反して可愛くあらへんな!」
射線に捉われないようにしながら。しかしふわりと浮遊される。
[メイン2] 里見 灯花 : 「可愛いなんて結構、勝てばいいんだからね!じゃ、全力で対応してあげるよ!」
[メイン2] 里見 灯花 : 瞬間、傘が大量に無から生み出される。
[メイン2]
櫻 美鳳 :
急停止───そして、その場で亀裂を残しッ……轟音を響かせながら
跳ッ躍ッ───!!!
[メイン2] 櫻 美鳳 : !! なんやこの傘……
[メイン2] 里見 灯花 : 「ふふっ」
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「仰山 もっとるなぁ! 何円かかるんや!」
[メイン2] 里見 灯花 : その傘が一斉に開き────
[メイン2] 里見 灯花 : 「わたくしの価値は、お金なんかじゃ図れないんだよ!」
[メイン2] 里見 灯花 : メイフォンの跳躍を”わかっていた”かのように
[メイン2]
櫻 美鳳 :
「ウチの逆やなッ! ウチのこれは『有料』なもんで……!」
[メイン2] 里見 灯花 : ────光が収縮、そして…一斉に、メイフォンに放たれる。
[メイン2] 里見 灯花 : その光線は、地面に当てれば抉れるほど。
[メイン2] 里見 灯花 : ビル群であれば、全てが当たれば無に帰す。
[メイン2]
櫻 美鳳 :
「くっっっ!!!」
ウチは───それを避けられないッ!!
けれどウチもそうヤワやあらへん! 跳躍の勢いを殺さないまま
当たる量は『最小限』にッ!!
[メイン2] 里見 灯花 : 「そりゃあ大変そうだね、”お金なんか”で困っちゃうなんて!」
[メイン2] 里見 灯花 : 「……!」
[メイン2]
櫻 美鳳 :
ウチの身に纏っている鎧が消し飛ぶと同時に
シュレッダーにかけたような金へと戻り、消滅していくッ!
[メイン2] 里見 灯花 : ……まさか、今のを避けようとするんじゃなくて……突っ込む!?
[メイン2] 櫻 美鳳 : けれど全部は剥がされへんッ!!
[メイン2] 櫻 美鳳 : これが全部剥がれるまでは『人間』としてのウチへのダメージもなんとか抑えられるんやッ!!
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「効いたで……!!」
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「けど……今度はうちの手番や」
[メイン2] 里見 灯花 : 一部の傘から放たれたものは、メイフォンからズレ、地面を削っていく。
[メイン2] 里見 灯花 : 「…くふふっ、ダメージが効いてるはず、当たったところで……」
[メイン2]
櫻 美鳳 :
周囲、否、ウチの体躯に亀裂が走る。
いやそれもまた違う。その亀裂は瞬くように消え、また現れる。
そしてその度に、光り輝き音を鳴らす。
───『電流』
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「ほな……」
[メイン2] 里見 灯花 : ばちりばちり、と響くその音。
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「ウチが受けた分を利子をつけて……返したるわ」
[メイン2] 里見 灯花 : 宙に浮く、傘をも軽く焦がしていくその正体……まさか。
[メイン2] 里見 灯花 : 「…随分自信たっぷりだね…!」
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「───ていうか金を溶かしたのはこっちやのに……」
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「なんでウチがそっちに返さへんとあかんねんてッッ!!!」
[メイン2] 櫻 美鳳 : 直後
[メイン2] 櫻 美鳳 : 電流の生み出す亀裂は指向性を持ち───
[メイン2] 櫻 美鳳 : 『敵』に収束するかの如く
[メイン2] 櫻 美鳳 : 『放電』ッッ!!!
[メイン2] 里見 灯花 : 「────っ」
[メイン2] 櫻 美鳳 : そして花火の如く───周囲にも何度か飛び散る
[メイン2]
里見 灯花 :
慌てて、浮遊に使用していた傘を向け。
いくつか逸らそうとするが────
[メイン2] 里見 灯花 : 傘にも勿論、持ち手があり。
[メイン2]
里見 灯花 :
先を伝い、持ち手から手に、腕に。
流れるように電流が、伝っていく。
[メイン2] 里見 灯花 : 「……が、っ……!!!」
[メイン2] 里見 灯花 : 右手が電流によって焼かれていくが。
[メイン2]
里見 灯花 :
「……中々効いた、けど……中々止まり」
その態度は、崩れることなく。
[メイン2] 里見 灯花 : 『転換』
[メイン2]
里見 灯花 :
手に伝わる熱エネルギーを、無害なものへと変えて……
その電流の影響を、最小限に。
[メイン2]
里見 灯花 :
……こういったけど、まさか”魔法”まで使われるなんて…
このお姉さん、油断できない……!
[メイン2] 里見 灯花 : けど、わたくしの方が”優位”!
[メイン2]
櫻 美鳳 :
くぅ~~……! なんちゅー荒療治や
どうやってウチの電流を最小限に無効化したんや……!?
にしても、敵も感染者のはずや……なんでもう一人がおらんのや? まさかウチと同じ……
[メイン2] 櫻 美鳳 : ウチは金やけど あっちは傘を愛しとるっちゅーことか!?
[メイン2]
里見 灯花 :
またもや、傘を生み出し。
不安定になった空中への足場を作る。
[メイン2] 里見 灯花 : 「よっと……お金のおねーさん!」
[メイン2]
櫻 美鳳 :
危なかった……ウチは「放電」も有料や……
あのまま放ち続けとったら、いつかは金との縁の切れ目やったっちゅー事や
[メイン2]
櫻 美鳳 :
そのおかげで、ウチはそのまま落下───
地に再び亀裂を広げながらも『無事』で済んだ。
[メイン2] 櫻 美鳳 : まだウチは『武器(アーム)』や。
[メイン2]
里見 灯花 :
……あんな空から落ちて、傷一つないなんてね……
わたくしの攻撃に耐えるだけあるね、あのアーマー……
[メイン2] 里見 灯花 : 「ねえ、あなた一体……何を”願う”の?」
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「……そりゃあ『金』に決まっとるわ」
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「ウチは……金を愛しとるんやからなぁ~!」
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「けれどウチはあらゆる願いを叶える力そのものは欲しくはあらへんな」
[メイン2]
里見 灯花 :
魔法少女は希望の存在、と言われた。
それならば……彼女にとって、”お金”が希望なのだろうか。
[メイン2] 里見 灯花 : 「……へえ、めっずらしいね」
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「簡単に手に入る金は紙切れ同然とか そんなんじゃあらへんで どんな方法でも強者に媚びる以外で手に入った金は全部綺麗な金や!」
[メイン2]
里見 灯花 :
今もなお攻撃をせずに話そうとしているのは……純粋な、興味。
わたくしの希望に叶うような”願い”を叶えようとしているのか。
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「そんな力手に入ったら最後 めっちゃ責任背負わされるやん!?」
[メイン2] 里見 灯花 : 「じゃあ別に祈っていいじゃーん、お金いっぱいほしーって……」
[メイン2] 里見 灯花 : 「………責任」
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「さすがにウチもそこまでは背負われへんし ウチって自分で言うのも他人を放っておけへんタイプやからさ」
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「あらゆる願いを叶えられるようなったら 世界中駆け巡らんとあかんわ」
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「そんなんかなわん だからウチはいらんで」
[メイン2] 里見 灯花 : 「……世界中を?…なんで?」
[メイン2] 里見 灯花 : 「そんな力があるなら、知ってる人だけ助ければいいのに……」
[メイン2] 里見 灯花 : ……どういうこと?
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「ど阿呆ッ! 金は人がいてこその金や! そして金は天下を回ってこその金や」
[メイン2]
里見 灯花 :
そんなに力があるなら、無理して世界を救おうとする必要なんてない。
ただ知ってる範囲が、人間にとっての「世界」だから。
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「だから誰かを放っておこうもんなら 金も腐るやろ」
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「それにウチ自身が……『強者』になろうとも思いたくあらへんからな 強者に媚びてこない人生だったからかもしれへんけど」
[メイン2] 里見 灯花 : 「………ひゃわっ…強くありたくない……?」
[メイン2] 里見 灯花 : 叱られたことに少し、びくりとなりながら。
[メイン2]
櫻 美鳳 :
「面倒ごとに巻き込まれたくはあらへんし 強くなるんなら」
頭をトントンと叩く。
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「ここを強くしたいわ」
[メイン2]
里見 灯花 :
天下があってこその、金……
他の人をいっぱい助けたい………?
[メイン2] 里見 灯花 : ちらり、とその仕草を見て。
[メイン2] 里見 灯花 : 「……わたくしみたいに頭よくなったら、きっと知る事も増えるよ!」
[メイン2] 里見 灯花 : いみふめー!!!
[メイン2]
里見 灯花 :
この人、なんでそんな合理的でもない言葉をそうつらつらと言えるの…!?
ただお金が欲しい、って願った魔法少女でもないの……!?
[メイン2]
櫻 美鳳 :
「───なーハッハッハッ! どんだけ頭良くても使い道はウチとあんさんで違うやろぉ!」
ウチはおもむろに、札束を二束取り出す。
[メイン2]
里見 灯花 :
ふわり、と傘がまた集まり。
それは何度か見た、攻撃の合図。
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「『追加』や───」
[メイン2] 里見 灯花 : 「しらないしらないしらない!!!わたくしは……頭いいのっ!」
[メイン2]
櫻 美鳳 :
閃光が走ると、その光は体中を迸り。
『全回復』───。
[メイン2] 里見 灯花 : 「………!!」
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「けれど行ったことあらへん所の知識は行かへんとわからんやろ?」
[メイン2]
里見 灯花 :
ギリ、と歯ぎしりをして。
光に包まれる彼女を見る。
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「スパイだってそうや どんだけIQが高くて…たとえば280ぐらいあっても わからん事があるからその国に潜入するわけや」
[メイン2] 里見 灯花 : 「………」
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「まっ ウチの事は……見習わなくてええでぇ~♪」
[メイン2]
里見 灯花 :
…わたくしは、確かに……行ったことない。
病気にかかり、病室から出たことのないわたくしは……
”知らない”
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「商売敵が増えても困るからなぁ……って どうしたんや」
[メイン2] 里見 灯花 : それは確かに、周りの人を救おうとしているわたくしには……… って
[メイン2] 里見 灯花 : 「……う、うるさぁぁあいいい!!これでも食らっておけばいいの!!」
[メイン2] 里見 灯花 : メイフォンの周囲に、傘が生まれ出る。
[メイン2]
櫻 美鳳 :
「いきなりっ……! まあでも……っ!」
再び、全身を駆け巡る電流。
[メイン2] 里見 灯花 : 瞬間、光を伴い……爆発の合図を────
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「さっきは『10万円』分や」
[メイン2] 里見 灯花 : ……なんで、わたくしの事なんか……わかるわけ……!?
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「これは……その倍の火力や」
[メイン2] 里見 灯花 : 「………!」
[メイン2] 里見 灯花 : どうせわたくしは誰も認められなかった、なのに……!!
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「『20万円』……苦渋の決断やからなッ……! ありがたく……」
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「そっちに清算してもらうでっ!!!」
[メイン2] 櫻 美鳳 : 単純に『2倍』の威力で
[メイン2] 里見 灯花 : 「……ま、まだっ……!!」
[メイン2] 櫻 美鳳 : ───周囲に瞬く亀裂ッ 『放電』ッッッ!!!
[メイン2] 里見 灯花 : ────確かに、傘たちは爆発はした。
[メイン2]
里見 灯花 :
しかし、その爆撃がメイフォンまで届くことはなかった。
”それ以上”のエネルギーで、上回れたから。
[メイン2] 里見 灯花 : 「こんな…まさ、かっ…!?」
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「その、まさか───や」
[メイン2] 里見 灯花 : 慌てて左手をかざし、『変換』しようとするが────
[メイン2] 櫻 美鳳 : これが───うん十万円の……火力やッ!!!
[メイン2] 里見 灯花 : …エネルギーの量が大きすぎて、アダプタが持たない…!?
[メイン2] 里見 灯花 : その”金”にも輝く、けたたましい電流は。
[メイン2] 里見 灯花 : 空を割るほどに、天まで上っていき────
[メイン2] 里見 灯花 : 「……っ、ぅあッ!!」
[メイン2] 里見 灯花 : ばちん、と里見の全身を駆け巡っていった。
[メイン2] 里見 灯花 : そのまま傘からも転落し、空から……そして、地に落ちる。
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「……と!」
[メイン2] 櫻 美鳳 : ウチはそのまま落ちる寸前に
[メイン2] 櫻 美鳳 : 地面と敵だった相手の間に滑り込んで
[メイン2] 櫻 美鳳 : よっしゃあキャッチ!
[メイン2] 里見 灯花 : 「……っ、え……」
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「傘が切れたかなんやしらんけど あのまま落ちたら確実にあかんかったやろ」
[メイン2]
里見 灯花 :
”魔法少女”は人間ではない。
黒焦げになっても、死につながることはないが…
[メイン2] 里見 灯花 : 「……な、なんで……わたくしを…」
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「そりゃ……誰も殺される謂われは無いやろ」
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「ウチも人を殺したくはあらへんわ」
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「まっ 敵が強ければ強いほど さっきみたいに火力は発揮するわけやけどな!」
[メイン2]
里見 灯花 :
……わたくしが、持ちきれないほどのエネルギーだったなんて……
今まで戦ってきた中で、これほどまでの力は、見たことない……
[メイン2] 里見 灯花 : 「……あ、え……でも、わたくしは……あなたを、消そうとして……」
[メイン2] 里見 灯花 : 「それなら、殺せば、いいのに……」
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「あんなん言葉の綾……ってヤツやろ~? いや本気だったとしてもやで?」
[メイン2] 里見 灯花 : ぼそぼそと、呟くように。
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「あんさんは願いを叶えるために必死やったんやろ?」
[メイン2] 里見 灯花 : 「…………」
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「なら仕方あらへん! 対立する運命やったってわけやし でもウチは願いを叶えるために必死ってわけでもあらへんし……仮にウチがあの力を欲するとしても」
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「誰かを殺してでも欲しいとは思わへん」
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「でもあんさんは誰かを殺してでも欲しいと思ったんや しゃあないわ」
[メイン2]
里見 灯花 :
……必死、そんな事……言われたこと、ない。
わたくしはなんでも、こなせるわけだから。
”頑張ってる”、なんて…一言も。
[メイン2] 里見 灯花 : 「………」
[メイン2] 里見 灯花 : 「あなた……確かに……優しい、んだね……」
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「そりゃあ 人情は大事にせぇへんとウチも天下を回れへんし」
[メイン2]
里見 灯花 :
はは、と軽く笑う。
出会った時とはまた違う、笑い方。
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「信用無くしたらイカサマで稼げへんしなぁ!」
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「内緒やで」
[メイン2] 里見 灯花 : 「……ぷふっ」
[メイン2] 里見 灯花 : 「なにそれ、イカサマなんて……ぷふふっ」
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「な、なんや、おかしい事言うたかもしれへんけど! イカサマはどん引きするところちゃうんか?」
[メイン2] 里見 灯花 : 子どものように、無邪気に口を抑えて。
[メイン2] 里見 灯花 : 「だって、悪いことしようとしても、お金を愛してるんだなぁって……」
[メイン2] 里見 灯花 : 「ちょっと、面白いなって思っちゃったの」
[メイン2] 里見 灯花 : あー……この人には、確かに勝てないかも。
[メイン2]
櫻 美鳳 :
「そりゃそうや! それに……一銭も金が無くなると……こうなるわけやからな」
すっぽんぽ~~ん!!!
[メイン2] 里見 灯花 : ……だって、こんなに…真っすぐなんだもん。
[メイン2] 里見 灯花 : 「………」
[メイン2] 里見 灯花 : 「にゃわわわわ!?!!?」
[メイン2] 里見 灯花 : 顔を真っ赤にして、慌ててバタバタと体を動かす。
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「あっ! い い 言うとくけど! ウチも痴女やあらへんからな! 恥ずかしくないだけでそんなタダで見せるわけちゃうし!」
[メイン2]
里見 灯花 :
「か、かさかさかさ!」
ふわふわと、隠すように
[メイン2] 里見 灯花 : 「……えっとじゃあ、タダじゃないんだよね」
[メイン2] 里見 灯花 : 「……わたくしが見ちゃった分の代金……稼がないと、かなぁ?」
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「い いやいやいや そんな……あんさんみたいなちっちゃい子には払わせへんわ」
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「そんかし……ウチが勝ったってのもあるけど……突然誰かに危害加えんのはもう無しやで」
[メイン2]
里見 灯花 :
……どうしてこの人は真っすぐにあれるのか……
”知りたい”、そして…どうしてそうあれるのかも。
[メイン2] 里見 灯花 : 「いーーーーやっ!」
[メイン2] 里見 灯花 : 「わたくしは、あなたについていく!」
[メイン2] 里見 灯花 : ぷんぷん、と頬を膨らませて。
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「な なんやてぇっ!? う ウチ子供のお守は苦手やてぇ……!」
[メイン2] 櫻 美鳳 : なんや……戦闘狂いと思うとったけど
[メイン2] 里見 灯花 : 「わたくしといれば、いーっぱいお金が稼げるよ?」
[メイン2] 櫻 美鳳 : ただ我がままなだけやったんかもしれへんな……この子も
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「……それはちょっと聞き捨てあらへんで」
[メイン2] 里見 灯花 : ちょっとくふふふ、と笑って。
[メイン2]
絹旗最愛 :
[メイン2] 絹旗最愛 : ぱちぱち、と。その空気を引き裂くように……瓦礫の下から。
[メイン2] 絹旗最愛 : 「あー……すみません、感動的な場面で超申し訳ないのですが」
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「……なら今日からあんさんはウチの子分……って……!!?」
[メイン2] 里見 灯花 : 「……む」
[メイン2] 里見 灯花 : 傘をふわりと浮かせて、臨戦態勢に。
[メイン2] 絹旗最愛 : 「お二人とも超お見事でした、わざわざ近くで見るだけの甲斐があったという感じです」
[メイン2]
櫻 美鳳 :
フードを被った女を見て、ウチは動揺する。
やばっ! アタッシュケースは向こうや! 手元にはもう金があらへんで!
[メイン2] 里見 灯花 : 「…あなた、だぁれ?」
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「せ せや! 名乗れ名乗れ!」
[メイン2]
里見 灯花 :
…とはいえ、先ほど致命傷を食らったばかり。
このまま戦闘するのは、ちょっと…やばいかも。
[メイン2] 絹旗最愛 : 「ああ……えっと、別にあなたたちに危害を加えるつもりは……」
[メイン2] 絹旗最愛 : 「自己紹介ですか。超面倒ですが、信用を得るためには仕方ないですね」
[メイン2] 里見 灯花 : 「じゃーなんでわざわざ出てきたのかにゃー?超おねーさん」
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「な ホンマか? ……ならええわ……って自己紹介ぐらいどれだけ言っても体力も金も減るもんやあらへんやろ!」
[メイン2] 里見 灯花 : 「………ふむ」
[メイン2] 絹旗最愛 : 「……あ。いや、やっぱりバレると超マズイので……適当にフード野郎とでも呼んでもらっていいです」
[メイン2]
櫻 美鳳 :
「野郎やあらへんやろ! ……ま まあええわ」
拍子抜けしたように頭を掻いて、そしてやっと汗を拭う。
[メイン2] 里見 灯花 : そ、そこで結局自己紹介しないのぉ?!
[メイン2] 里見 灯花 : 「……じゃあ超フードお姉さんでいいかにゃ」
[メイン2] 絹旗最愛 : はぁ、とそれを尻目にため息を。
[メイン2] 里見 灯花 : そうしてちらり、と最愛へと向き直る。
[メイン2] 絹旗最愛 : 「では、超そんな感じで。……ってのもですね、勝ち残ればいいだけなら瓦礫の中にでも隠れてればいいのに、皆して超戦闘狂ばっかりで困ってたとこでして」
[メイン2] 絹旗最愛 : 「最後にチームが残って一対多になっても多勢に無勢、共闘仲間でも探そうと思いましたが……全員が勝手に潰しあうせいで超台無しです、冷や水ですよ」
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「……有力な情報やな……って戦闘狂ばっかりて……金がなんぼあっても足りへんわ!」
[メイン2] 里見 灯花 : 「お外はそんな事になってたんだねえ、みんな合理的じゃないなあ」
[メイン2]
櫻 美鳳 :
残り970万円もあるで?……けれど逆に考えれば
ウチの生命線はあと970万円分ってことや
[メイン2] 里見 灯花 : 自分が先に仕掛たことを忘れておきながら。
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「なーはははは……あんさんも言えた事やあらへんやろぉ……30万円分も溶かしたしなぁ」
[メイン2] 絹旗最愛 : 「お金ですか……私ももう少し上の金払いが良ければマシな生活を送れるってもんですけど」
[メイン2] 絹旗最愛 : 「ま、そういう訳で。お仲間を一人募集しようといった腹積もりです、超簡単に言えば」
[メイン2]
里見 灯花 :
「うっ……あ、あれはつい、楽しかったから…」
ばたばたと、メイフォンの言葉に体を動かしつつ。
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「いまさらかわい子ぶっても ウチはしっかりこの目で見とるからな!?」
[メイン2] 里見 灯花 : 「い、いいの!!もーわたくしははんせーしました!!」
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「……ん 一人? そういう腹積もりは今のウチらにとっては大歓迎やけど……『一人』やて? ここには二人おるわけやけど」
[メイン2] 里見 灯花 : こほん、と咳払いして最愛に向き直り。
[メイン2] 絹旗最愛 : 「はい。『一人』」
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「…………セットで今ならもう一人ついてくるで!」
[メイン2] 里見 灯花 : 「わたくしはパース、だけど、お金おねーさんによるかな」
[メイン2] 里見 灯花 : ちらり、とメイフォンへと視線を移して。
[メイン2]
櫻 美鳳 :
「な ななな……!」
責任重大や……! ウチが決めるんかい!
[メイン2] 絹旗最愛 : 「いえ、一人で超十分です。最終的に勝ち残るのは一人なわけで、三人チームでは最終的な権利も三人に分散され…おっと」
[メイン2] 絹旗最愛 : 「あなたたちに決定権はありません。どちらが私についてくれるか━━超それだけです」
[メイン2] 絹旗最愛 : きゅいい、と右の掌の周りに空気が渦巻く。
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「分け前もたっぷり───ってわけにもいかへんようやな……」
[メイン2] 里見 灯花 : 「……十分高圧的なんだね?……ッ」
[メイン2] 絹旗最愛 : 「……いやいや。『そういう場』だと超仰ってたじゃないですか」
[メイン2]
里見 灯花 :
……この人がさっきまで瓦礫に隠れていたのは、”憶病”……ってわけではない。
”隙を狙っていた”から……
[メイン2]
櫻 美鳳 :
くしゃっ、ウチが踵で何かを踏む……
ぼろっぼろの千円札……アタッシュケースの金じゃああらへん……
千円……1円を笑うものは1円に泣くってのがある 一瞬で千円は溶けるやろけど
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「……わかった ええで……ただそれはいわば銃口や」
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「銃口を向けるのは脅しやすまへんで それは殺しの道具なんや」
[メイン2]
櫻 美鳳 :
ウチはばっと千円札を掲げて
光に包まれ───
[メイン2] 里見 灯花 : 「……!」
[メイン2] 絹旗最愛 : 「!」
[メイン2] 櫻 美鳳 : ───先ほどのダメージが残っている少女を抱えて フード野郎から咄嗟に離れるッ!!!
[メイン2] 櫻 美鳳 : 同時に、距離を取る途中でアタッシュケースから札束をもぎ取り───
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「追加や……念のため『50万円』分」
[メイン2] 里見 灯花 : この”魔法”……でも、お金は足りないはず……!!
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「安心せい」
[メイン2] 里見 灯花 : 「……おっけー、やる気……だね」
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「これ使っても……残り920万円や」
[メイン2] 絹旗最愛 : 「……さっきまで全力で争っていたというのに、超随分とタフなことで」
[メイン2] 里見 灯花 : 「……思ったより一杯あるんだね」
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「なーはっはっはっ! そりゃいつも金の為に存在を削っとるからなぁ! ……ってこの言い回しはウチに似合わんか」
[メイン2]
櫻 美鳳 :
『50万円』をリブレイターとし
ウチは更にその力を強める。
[メイン2]
里見 灯花 :
お金おねーさんの魔法は、お金の数=力を出せる
ということ……なるほどね。
[メイン2]
里見 灯花 :
……さっきの傷が結構続いてる。
わたくしにできる事は……
[メイン2] 里見 灯花 : 抱えられたまま、傘を向かせて。
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「にしても……あんさんも『一人』やのに……『力』が使えるんやな……ウチとおんなじ特殊なエクスターやな?」
[メイン2] 里見 灯花 : 「わたくしだって、戦えない訳じゃないから……」
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「……無理はあかんで」
[メイン2] 絹旗最愛 : 「……えくすたー?はて…」
[メイン2] 櫻 美鳳 : うちは前を向いたまま、少女にそう呟く。
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「……へ? 知らんの?」
[メイン2]
里見 灯花 :
2:1、消耗したわけではあるけど。
それくらい自身があるの、かな……
[メイン2] 里見 灯花 : 「……なにそれ?新種の化合物?」
[メイン2] 櫻 美鳳 : 野良のエクスター……? って……こっちも知らんの!?
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「…………なんか妙やけど、まぁまぁ……ええわ」
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「やる事は決まっとるようやからな」
[メイン2]
里見 灯花 :
…無理をするな……
でも、わたくしは……”認めてくれる人”がいる。
初めてできた人、だから……その人に、”認めて欲しい”。
[メイン2] 絹旗最愛 : 「うーん……この場で消耗するのはお互いにとって超得策ではない気がしますが」
[メイン2]
櫻 美鳳 :
「……なら、この場は潔く諦めた方がええで
と言ったけど 選択権はそっちにしかあらへん言うとーたしな」
[メイン2]
里見 灯花 :
「それじゃあ、やめとく?わたくしだって、別に戦いたいわけじゃないし」
……勿論、戦えばわたくしは…タダじゃすまない。
だから避けたいん、だけど。
[メイン2] 絹旗最愛 : 「……いやぁ、なんというか分からないんですよ。切り捨てればいいじゃないですか……そちらの痴女の方だって、その傘の少女を束の間に利用しようというだけでしょう?」
[メイン2] 里見 灯花 : 「…………っ」
[メイン2] 里見 灯花 : ぎゅっと、メイフォンの裾を……握る。
[メイン2] 絹旗最愛 : 「最後に残るのは一人だけ……なら、何を言っても所詮超ビジネスライクな関係に過ぎないというのに」
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「……なんやなんや 一部始終を見とったわりには……それに収束するんかいな」
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「まぁビジネスライクな関係なのはそーかもしれへんな」
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「けど……ウチは一生もんにしたいと思っとるんや」
[メイン2]
里見 灯花 :
その言葉に、ぱぁっと顔を明るくし。
メイフォンへと、顔を見上げる。
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「あとなぁ……」
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「ウチは痴女やあらへんて!!!」
[メイン2] 絹旗最愛 : 「おやおや、超余裕ですか……この期に及んで愛の告白だなんて」
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「まぁそう受け取るんなら 受け取ってもらってもええで」
[メイン2] 里見 灯花 : 一生モノ、なんて……ふふ、えへへへ……
[メイン2] 里見 灯花 : 軽く、少し笑いつつも。
[メイン2]
櫻 美鳳 :
「ただウチは……金にはほんっと貪欲やからな」
一万円だけすっと取り出し靡かせる。残り919万円。
[メイン2] 絹旗最愛 : 「そうですか……私が死んだら二台目フード野郎を襲名させてあげてもいいですよ、痴女さん」
[メイン2] 絹旗最愛 : ひらひらと袖を振る。
[メイン2]
里見 灯花 :
「…そーだよ、この方は痴女じゃなくお金を求める守銭奴なんだからねっ!」
褒め言葉のつもり。
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「なーはっはっはっ! せや! ウチは守銭奴や!」
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「すでに守銭奴の三文字があるから 二代目フード野郎はお断りさせてもらうわ」
[メイン2] 櫻 美鳳 : 体中を駆け巡る亀裂、否、電流。
[メイン2]
里見 灯花 :
『変換』
その力を、"見掛け倒し"だけ強くする。
実際は強くはなっていないが、電流が魅せる大きさは、さらに高まり。
[メイン2] 絹旗最愛 : 「相手の能力も知らないうちから、自らの手の内を曝け出す……超不用心なことで」
[メイン2] 櫻 美鳳 : ───! ……おおきに。
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「はんっ 見とった癖に」
[メイン2] 絹旗最愛 : 「……!」
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「ただ50万円分やで? 50万円分」
[メイン2] 絹旗最愛 : 「え……いやいや、その出力は超聞いてないんですけど」
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「そしてさっきお情けで1万円分課金したんや」
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「51万円……なんかアレや あと2万追加して 53万がええか?」
[メイン2] 絹旗最愛 : 「キモ」
[メイン2]
里見 灯花 :
……しょーじき、お金の凄さは舐めてたけど…
ここまで強くなるなんて、判断を改める必要があるよね…!
[メイン2] 里見 灯花 : 「すぎ」
[メイン2] 里見 灯花 : ……はっ、わたくしは何を!?
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「…………まあ そういわれる謂われは……」
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「あるわなァっッ!!!!!!」
[メイン2] 櫻 美鳳 : 空間を駆け巡る亀裂ッ!!
[メイン2] 櫻 美鳳 : 『放電』ッッ!!!
[メイン2] 絹旗最愛 : ……とはいえ、出オチは超まずいですね……!
[メイン2] 絹旗最愛 : そこらにあった大きな瓦礫を……窒素で纏って持ち上げ。
[メイン2] 絹旗最愛 : 「ほいっ」
[メイン2] 絹旗最愛 : 手の空いた、里見の方へ。
[メイン2]
里見 灯花 :
わたくしの近場から放たれたその、圧力は…
ふわりと髪を揺らし。
[メイン2] 里見 灯花 : 「なっ─────」
[メイン2] 里見 灯花 : しまった、このままじゃガードも出来ない…!
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「ッッ!! あかん───」
[メイン2] 櫻 美鳳 : 飛んできた瓦礫を、放電を打ち止めて
[メイン2] 櫻 美鳳 : 受け止めようと───……!!?
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「なっ……!!」
[メイン2] 櫻 美鳳 : ギリギリ持ち堪える……がっ
[メイン2] 櫻 美鳳 : アーマーが今の一瞬で『10万円分』……消し飛び
[メイン2] 絹旗最愛 : 「ふぅ……死ぬかと思いました。痴女さんが仲間思いだったことを超感謝しないとですね」
[メイン2]
櫻 美鳳 :
た ただ瓦礫を投げられただけで なんちゅーパワーや……!
ってあんなでっかい瓦礫投げられるんか 普通!
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「大丈夫か……? 大丈夫やな」
[メイン2] 里見 灯花 : 思わず目をつむっていたが、衝撃はなく。
[メイン2] 里見 灯花 : 「……あ、ありが…とう」
[メイン2] 櫻 美鳳 : 後ろに一瞬だけ目線を送り。
[メイン2] 里見 灯花 : その目線にこくこくと返して。
[メイン2]
櫻 美鳳 :
「くぅうっ……!」
どうにか止めた瓦礫を、近くに放り投げる。
さっきの「フード野郎」より飛距離の差が開きすぎていたが。
[メイン2] 里見 灯花 : ぎゅっと、さらにメイフォンとの体にしがみついて。
[メイン2] 絹旗最愛 : 「あー……えっと……」
[メイン2]
櫻 美鳳 :
「大丈夫や ちょいと驚かされただけや……」
思わずその頭をすっと撫でる。
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「……なんや」
[メイン2] 里見 灯花 : 傘を……今の出力なら一本だけ生み出し。
[メイン2] 里見 灯花 : 「ふわ………」
[メイン2] 絹旗最愛 : 今度は、その片手には建設用ロードローラーを。
[メイン2] 絹旗最愛 : 「……続けて、いいです?」
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「ははは…………へ?」
[メイン2] 里見 灯花 : 思わずびくり、と体を震わせて。
[メイン2] 櫻 美鳳 : う、うせやん……
[メイン2] 里見 灯花 : 「……うええ…!?」
[メイン2] 櫻 美鳳 : 『ロードローラー』だッ!!?
[メイン2] 里見 灯花 : その次にある、”ソレ”にさらに体が震えた。
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「ちょ ちょちょ タンマや! ……あ、あんさんはすぐ離れるんや!」
[メイン2] 櫻 美鳳 : 少女に目をやり、衝撃に備えて構える。
[メイン2] 里見 灯花 : 「…ッ………うん…」
[メイン2] 絹旗最愛 : 「えー……超めんどいんで、5秒だけですよ」
[メイン2]
里見 灯花 :
すぐさま、離れて。
ひょいと体から手を離し。
[メイン2]
櫻 美鳳 :
「い いや待つんかーい! って5秒……」
4……3……2……
今の瓦礫はほんの小手調べ……勢いよく投げられたら1秒とかからずにあれは
[メイン2] 櫻 美鳳 : 飛んでくる……!
[メイン2] 里見 灯花 : 先ほど、生みだせた一本は護衛に…片手に。
[メイン2] 絹旗最愛 : 「1……0。はい」
[メイン2] 絹旗最愛 : くる、と向きを変え……そのままあくまで里見の方へ。
[メイン2]
櫻 美鳳 :
「目に物見せられすぎたわ……! 思わず仰天……けれど
う ウチだってなぁ……ただ攻撃したり あんさんには劣るけど怪力だけじゃ 無いんや……!!?」
[メイン2] 櫻 美鳳 : なんやて
[メイン2] 櫻 美鳳 : クソっ!!!
[メイン2] 里見 灯花 : 「────な」
[メイン2] 櫻 美鳳 : ウチは踏み込み。
[メイン2] 里見 灯花 : その一本を、思わず……開く、が。
[メイン2] 櫻 美鳳 : すぐに、また先ほどと同じように
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「あかん───……!!」
[メイン2] 里見 灯花 : 出力対決なら、目に見えていて……
[メイン2] 里見 灯花 : 「………お金おねーさん……!?」
[メイン2]
櫻 美鳳 :
今の踏み込みで力をまた使ったけれど……やれるか!
間に合え……バリアや───!!!
[メイン2] 櫻 美鳳 : 放電の力を『守り』に徹させる。
[メイン2] 絹旗最愛 : 「む……」
[メイン2] 櫻 美鳳 : 周りの砂鉄が浮かび上がるほど磁力を発生させながら───!
[メイン2] 里見 灯花 : ────いや。
[メイン2] 里見 灯花 : 『変換』
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「にっ ににににっっっっ……くっ……くっっっっ~~~~!!!」
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「!!」
[メイン2] 絹旗最愛 : 「……え?」
[メイン2] 里見 灯花 : 『守り』、をありったけの………
[メイン2] 里見 灯花 : 『攻め』に。
[メイン2] 里見 灯花 : 「…ぅ、ぁああああッ!!」
[メイン2] 里見 灯花 : 左手を、その磁力へと向けて────
[メイン2] 里見 灯花 : ぐるり、コネクタを変える。
[メイン2] 絹旗最愛 : 「えっ」
[メイン2]
櫻 美鳳 :
金が弾け飛び、周囲に舞う中
う ウチのバリアーが……ロードローラーの衝撃を防いでいた『守り』が
[メイン2] 櫻 美鳳 : 『攻め』へと転じていたッ!!
[メイン2] 里見 灯花 : その”魔法”が生み出す穢れが自らの魂を削っていく心地を感じながら。
[メイン2] 里見 灯花 : 「お金の力って、すんごいんでしょ!!」
[メイン2] 里見 灯花 : 「なら、もっと見せつけてやってよ!」
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「……! せや……凄いで! だから見せたろうやないか51万円が……」
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「51億ぐらいに仰山増えるぐらいの……」
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「『力』ッ!!」
[メイン2] 絹旗最愛 : 銃弾程度なら数発受けようがなんら問題ない……はずだった。でも、あれは……
[メイン2] 櫻 美鳳 : そして───放つ。
[メイン2]
里見 灯花 :
うずくまりながら、ギリリと歯ぎしりを立てながらも。
しっかりと、睨みつけて。
[メイン2] 絹旗最愛 : 「……っ…!!『窒素━━
[メイン2]
櫻 美鳳 :
───ロードローラーは轟音を立て、あまりの衝撃に途中で分解されながらも
音速を超えて……飛ぶ。
[メイン2] 櫻 美鳳 : それはまるで
[メイン2]
櫻 美鳳 :
レールガン
『電磁砲』
[メイン2] 里見 灯花 : 「………わあ」
[メイン2] 里見 灯花 : 思わず、声が零れた。
[メイン2] 絹旗最愛 : どん、という鈍い音は……その光にかき消され。
[メイン2] 絹旗最愛 : やがて、彼女の姿はばらばらと崩れる瓦礫の中に消える。
[メイン2]
櫻 美鳳 :
「───ぷはぁっ……!!!」
息を呑み、呑んで、のみほしすぎて、吸い込みすぎた息を一気に解放する。
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「はぁーっ……はぁーっ……」
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「はぁーーーっ……」
[メイン2] 櫻 美鳳 : 膝をつき、またウチはすっぽんぽんや。
[メイン2] 里見 灯花 : 「………っ、…すっごい、すっごいエネルギー……!」
[メイン2]
里見 灯花 :
なんとか傘を杖に。
そして、メイフォンへと近づいていく。
[メイン2] 里見 灯花 : 「……よいしょっと」
[メイン2]
櫻 美鳳 :
「お おおきに……あっ」
名前を訊き忘れとったわ……そういえば。
[メイン2] 里見 灯花 : 傘を開いて、誰からも見えないようにしながら。
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「…………ウチは櫻美鳳や」
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「……あんさんは……なんて名前や?」
[メイン2] 里見 灯花 : 「……あ、そうだった……」
[メイン2] 里見 灯花 : 「わたくしは、里見灯花」
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「……灯花 ええ名前や」
[メイン2] 里見 灯花 : 「美鳳おねーさんだね……脳細胞の一つ残らず覚えたよ」
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「……な なんやその言い回しはなんか重いで! かるーくでええで かるーくで!」
[メイン2] 絹旗最愛 : がらん。
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「……な」
[メイン2]
里見 灯花 :
「……そ、うかな……う、……うにゃあ……」
褒められて、少し照れながら────
[メイン2] 里見 灯花 : 「……なっ…」
[メイン2]
櫻 美鳳 :
「うせ……うせやん……!」
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「今ので倒れへんっちゅーうんか……!」
[メイン2] 絹旗最愛 : 「……っ……はぁ……聞いてないですよ、第三位並の出力なンて…」
[メイン2] 里見 灯花 : 「……全出力を、攻撃に転じたはず…ッ…!?」
[メイン2] 里見 灯花 : 今のを耐えられるなんて、それこそ…”ワルプルギスの夜”くらいしか、聞いたことないのに……
[メイン2]
櫻 美鳳 :
「……ウチもこんなん、聞いてへんで」
ウチはアタッシュケースの金をまた鷲掴む。
[メイン2] 絹旗最愛 : 「……ん……あァ、これでも……体の硬さは数少ない売りなモノで」
[メイン2] 絹旗最愛 : 「……えっと……まぁ、でも……こうなったら抵抗する力は超残ってないですよ、安心してください」
[メイン2] 絹旗最愛 : 諸手を上げてみせる。
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「…………ホンマかぁ~?」
[メイン2]
里見 灯花 :
「…そ、それなら敗走すればいいじゃん!」
傘を閉じて、先を向けて
[メイン2] 絹旗最愛 : 「はい……私も超疲れましたし。てわけで」
[メイン2] 絹旗最愛 : 「どっちが……私を終わらせますか?」
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「あ………!!? なんやて!」
[メイン2]
里見 灯花 :
「……………」
そういう、事。
[メイン2] 絹旗最愛 : 「ええ、超簡単に言うと私は負けたので早く殺してください……っつってるんです」
[メイン2] 里見 灯花 : 「……うん、わかった」
[メイン2] 里見 灯花 : 「それが、”合理的”だもんね」
[メイン2] 絹旗最愛 : 「わかってるじゃないですか、私は心配だったんですよ」
[メイン2]
里見 灯花 :
傘の先は向けたまま。
ぽわり、と虹色に光っていき。
[メイン2]
櫻 美鳳 :
「なんやて───そんな事…………! 灯花……」
合理的。確かに合理的。けどなぁ けどなぁ…… けれどウチも気づけば膝をついて、たまっていた疲労に沈んでいた。
[メイン2] 里見 灯花 : ────ピシュン。
[メイン2] 里見 灯花 : 虹を掛けるその熱線は、最愛を……
[メイン2] 絹旗最愛 : ━━私に勝った奴が、誰かを殺せずに超負けてほしくないですし。
[メイン2] 絹旗最愛 : ……今度は、確かにその細い身体を貫き、崩れ落ちる。
[メイン2] 里見 灯花 : 「…………」
[メイン2] 里見 灯花 : …ただ、無言でそれを見送って。
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「……! 灯花……殺ったんか……」
[メイン2] 里見 灯花 : 「………ごめん」
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「───いや、ええ……責めへん」
[メイン2] 里見 灯花 : 顔は…向けられなかった。
[メイン2] 里見 灯花 : 「でも……美鳳おねーさんに、手を……汚して欲しくなかった」
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「本来ここは『そういう場』や……ウチがイレギュラーなんや。けどウチはあんさんみたいにちっちゃいのが手を汚すのも嫌やったで……」
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「…………優しすぎるわ、あんさん……でもその泥は濯がれへんくなるで……!」
[メイン2]
里見 灯花 :
その真っ直ぐな、金色の目を、濁らせたくは…なかった。
その濁らせる泥が、美鳳おねーさんに掛かる、くらいなら……
[メイン2] 里見 灯花 : 「……う、うぅ…でも、ごめん…!」
[メイン2] 里見 灯花 : 「……わたくしは、いくらだってその泥の中でもがける…"合理的"にだって、なれるから…!」
[メイン2] 里見 灯花 : 思わず、声が大きくなって。
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「わかった………………『半分』や」
[メイン2] 里見 灯花 : 「………え?」
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「あのフードをあそこまで追い込んだんは結局ウチでもあるんや」
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「なら実質 ウチも共犯なわけやん」
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「ならこの泥はウチも被るわ!」
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「これで『お揃い』やろ!」
[メイン2]
里見 灯花 :
「…………」
それはでも……
[メイン2] 里見 灯花 : 「………!」
[メイン2] 里見 灯花 : 「………う、うぅ…も、もう……!」
[メイン2]
里見 灯花 :
くるり、と向き直って。
その瞳には、少し涙で濡れて。
[メイン2] 里見 灯花 : 「……ほんっ、とーーに……美鳳おねーさんは、優しいんだから……」
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「な そこまで泣かんくてもええやん……ウチは義理は通さへんとあかんだけや」
[メイン2]
里見 灯花 :
「……ううん、それが嬉しかったから、だよー!」
そのまま、胸に飛び込むように抱きついて。
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「あっ ちょっ あっ だはははっ! ちょっと擽ったいわぁ~!」
[メイン2]
里見 灯花 :
「んふふふー!……ねえ、あの…さ」
下から、上目遣いに見つめる。
[メイン2]
櫻 美鳳 :
切り替えが早いというか、むしろ濁すものもないというか
灯花……もしかするとウチよりも度胸あるわ……良い意味でも
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「な なんや?」
[メイン2] 里見 灯花 : ぐず、と……涙ぐんだ声で、そう言いながら。
[メイン2] 里見 灯花 : 「……お姉様、って呼んでもいい?」
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「……ええで そんぐらい……こっぱずかしいけれど」
[メイン2]
櫻 美鳳 :
あのフードの死体を一瞥する。
こんな場所で言ってくるのも何というか……神経が図太いというか。
[メイン2]
里見 灯花 :
わたくしの罪は、きっと深く深く。
宇宙で図れないほどの重みなんだろう。
[メイン2]
里見 灯花 :
……でも、なんだか嬉しかったから。
その思いだけでワガママになれる、子どものわたくしだった。
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「───とにかく……」
[メイン2]
櫻 美鳳 :
「こっから離れるで……」
ウチは死体を今度は凝視し、こんな格好やけど
[メイン2] 櫻 美鳳 : 仏さんに手をあわせようとした。
[メイン2] クロエ : ──その時
[メイン2] クロエ : 「纏まってるなら丁度いいや」
[メイン2]
里見 灯花 :
えへへへー、と。
笑っていたところに。
[メイン2] クロエ : 黒鉄の大楯を、絹旗に叩き落す
[メイン2] 里見 灯花 : ばぁん、と大きな音が鳴り響く。
[メイン2] クロエ : 粉塵をまき散らして
[メイン2] 里見 灯花 : 「…………きゃっ…!?」
[メイン2] クロエ : 大楯の人形が、戦場に現れる
[メイン2]
櫻 美鳳 :
スレスレで
ウチの目の前に叩き落される大楯。声すら漏らす事もできなかった。
[メイン2] 櫻 美鳳 : そして数秒して、やっと。
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「な……! なんやって……!!?」
[メイン2] 里見 灯花 : 塵に、風に。
[メイン2] クロエ : 「…あ~あ」
[メイン2] クロエ : 「ハズレだ」
[メイン2] 里見 灯花 : 髪が、たなびく。
[メイン2] クロエ : 「…コイツはもう死んでたのか」
[メイン2] 里見 灯花 : 「………え、何が…… っ!」
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「……仏さんに死体蹴りたぁ 何考えとるんや……あんさん……!!!」
[メイン2] 里見 灯花 : 目の前に現れた……"敵"が。
[メイン2] クロエ : 電子の粒の中に、立っている
[メイン2] クロエ : 「でも、願いを叶えるんだろ」
[メイン2] クロエ : 「死んでたのなら仕方ないけどさ」
[メイン2] 櫻 美鳳 : ───なんやこれ。血飛沫があがらなかった。
[メイン2] クロエ : 粉塵の中から、銃器を向けて
[メイン2] 里見 灯花 : 「……」
[メイン2] 櫻 美鳳 : けれど、そんな事より頭に血が上っていた。
[メイン2] クロエ : 乾いた音と共に針を打ち出す
[メイン2] 櫻 美鳳 : そしてウチは札束を咄嗟に───愛し……
[メイン2] 櫻 美鳳 : 『10万円分』のアーマーを纏い、その針を食らう。
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「ぐっっ……!!」
[メイン2]
里見 灯花 :
「……!」
傘を開いて、慌ててそれを受けようと。
[メイン2] クロエ : 「弾いた?」
[メイン2] 里見 灯花 : するが────貫かれる。
[メイン2] クロエ : そっか、と続けて
[メイン2] 櫻 美鳳 : う 今の一瞬で……もう『一万円』飛んでった……!
[メイン2] クロエ : "弾けなかった方"に、シールドバッシュをぶつけに掛かる
[メイン2] 里見 灯花 : 一本じゃ足りない……!?
[メイン2]
櫻 美鳳 :
「くうっ! 行かせへんでッ!!」
電流が駆け巡り───『人形』に向かい、放電ッッ!!!
[メイン2] クロエ : 黒鉄の"壁"がそのまま、高速で迫る
[メイン2] クロエ : 「そうか、そっちが」
[メイン2]
里見 灯花 :
ハッ、と息をのんで。
傘生成はまにあわ────
[メイン2] 里見 灯花 : 「………お姉様!」
[メイン2] クロエ : 「"守ってあげる方"なんだ」
[メイン2] クロエ : そのまま足を止めず
[メイン2] クロエ : 電流に向かって吶喊する
[メイン2] 里見 灯花 : ……お願いッ!まだわたくしの体……持って…!
[メイン2] 里見 灯花 : 左手を向け。
[メイン2]
櫻 美鳳 :
何や───ウチは思わず肩を震わせる。
『恐怖』───こんなの……知らん 見た事あらへんわ…!
[メイン2] 里見 灯花 : 『転換』
[メイン2] 里見 灯花 : ぐるりと、”攻める盾”にその電流の圧力を上げていくが…
[メイン2] クロエ : 「ヒリつくな…」
[メイン2] クロエ : 瞬間、楯を変形させて
[メイン2] 櫻 美鳳 : クゥウウ~~~!!! と、止まれっ止まれっ止まれ止まれ止まるんやぁっ!!!
[メイン2] 里見 灯花 : その電流は、先ほどと同質の質力。
[メイン2] クロエ : スラスターを展開し、楯"だけ"を突っ込ませる
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「なんやと───!!!」
[メイン2] クロエ : ジェットを吹かして黒鉄の塊が突っ込み
[メイン2] クロエ : 「そっちの技か!」
[メイン2]
里見 灯花 :
……まだ、止まらない……!?
たらり、と汗をかきながら……
[メイン2] クロエ : 空いた両腕で、櫻に射撃を浴びせる
[メイン2]
櫻 美鳳 :
「あぐっ!! うぁああああっっ!!?」
弾け飛び、宙で踊り狂う金の切れ端。そしてあっという間にウチのアーマーが解ける。
[メイン2] 櫻 美鳳 : あかん、『10万円』ですら……足りへんっ!
[メイン2] 里見 灯花 : 「お姉さま……!!このッ……!!」
[メイン2] クロエ : そのまま、ジェット推進で突っ込む楯は
[メイン2] クロエ : 直進、直進、直進
[メイン2]
里見 灯花 :
ズキン、と宝石が描く痛みを感じながら。
大量の傘を空から生み出して……
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「灯花ッッ……───!!!」
[メイン2] クロエ : 「ああ、そうか」
[メイン2]
櫻 美鳳 :
なんや 今の感覚は
『悪寒』……?
[メイン2] クロエ : 「…頑張れば"耐えられる"?」
[メイン2] クロエ : 「じゃあ」
[メイン2] クロエ : 楯の推進が止まり
[メイン2]
里見 灯花 :
「……ぅ、よくもッ……!!!」
……あそこで、傷つけられた……お姉様を……!!!
わたくしが、倒さないと……!!
[メイン2] クロエ : クロエが楯に向かって、走り
[メイン2] 里見 灯花 : 美鳳へと頷いて、傘を一斉に開く。
[メイン2] クロエ : その楯を、掴む
[メイン2] 里見 灯花 : 圧倒的な熱線が、クロエと楯へと一点集中する。
[メイン2] クロエ : 「2:1ってさ、不利だよね」
[メイン2] クロエ : 「だから」
[メイン2] クロエ : その熱戦に対して
[メイン2] クロエ : 楯を
[メイン2] クロエ : "空へ跳ね上げさせる"
[メイン2] 櫻 美鳳 : ───!!?
[メイン2] 里見 灯花 : 「なっ」
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「灯花ッ!! 避けるんやッッ!!!!」
[メイン2] クロエ : 「────唸れ機神」
[メイン2] 里見 灯花 : 傘は────
[メイン2] 里見 灯花 : 空に、ある。
[メイン2] クロエ : 空に舞う楯は
[メイン2]
里見 灯花 :
避けようも、防ぎようも。
今の灯花には────
[メイン2] クロエ : 瞬間、全ての拘束プロトコルを解除する
[メイン2] クロエ : そして、楯を辞める
[メイン2] 里見 灯花 : ────術がない。
[メイン2] クロエ : 「ミノタノス」
[メイン2] クロエ : 「…やろうか」
[メイン2]
櫻 美鳳 :
ウチはアタッシュケースから───もう何がなんでも止めようと
何百万と抱え込んだ。
[メイン2] クロエ : 刹那
[メイン2] 櫻 美鳳 : 間に合え
[メイン2] クロエ : 楯が、大爆発を起こす
[メイン2] 櫻 美鳳 : 間に合ってくれや───……!!! あ……!!!
[メイン2] クロエ : そして、その形状を大きく
[メイン2] クロエ : "機械の巨神"の如き姿に変わり
[メイン2] クロエ : 無数の弾丸、砲弾、炸薬、鉄塊を
[メイン2] クロエ : 辺り一面に放射し始める
[メイン2] クロエ : 「これで」
[メイン2] クロエ : 「2:2だろ?」
[メイン2] クロエ : にやりと
[メイン2]
櫻 美鳳 :
ウチは閃光に包まれる寸前に
その雨を───幾度か喰らう。
[メイン2] クロエ : その人形は、笑っている
[メイン2]
里見 灯花 :
「っ……」
魔力は、空をついていて。
[メイン2]
櫻 美鳳 :
そして、光に包まれ
身に纏った『数百万』は───灯花を助ける前に
[メイン2] 櫻 美鳳 : 次々と弾け飛び、その衝撃によってウチの身体は踊り狂ったように舞う。
[メイン2] 櫻 美鳳 : そして最後は壁に叩きつけられ、再び『裸』となった。
[メイン2]
里見 灯花 :
……お姉様……!!!
そんな、わたくしなんかを……守るために……
[メイン2] クロエ : 「どう?」
[メイン2]
櫻 美鳳 :
「うっ……ぐぐっ……!!! ~~~~~!!!!」
声にならない痛みが全身を駆け巡り、今すぐにでも地面の上を這いつくばるどころか転げまわりたかった。
[メイン2] クロエ : 見上げていた彼女は、今は見下ろして
[メイン2] 櫻 美鳳 : けれどウチはそれでもアタッシュケースに手をかけて、札束を取り出した。
[メイン2] 里見 灯花 : 「おねえさまぁっ………!!!!」
[メイン2] クロエ : 「ふうん」
[メイン2] クロエ : 「そのお金が武器なんだ」
[メイン2] クロエ : すかさずアタッシュケースに射撃し始める
[メイン2]
里見 灯花 :
……傷がわたくしには、何もついていない。
それが…無力で。
[メイン2] 里見 灯花 : 「……ッ…!!!」
[メイン2]
櫻 美鳳 :
「っあ……!」
金が一瞬にして蜂の巣にされる。
[メイン2]
櫻 美鳳 :
そして残ったのは───数十万。死守した。
けれどその瞬間にも、ウチは負傷を重ねた。
[メイン2] クロエ : 「ミノタノスはそっちのドレスの子を抑えて」
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「~~~~!!! あぁあああああああっっっ!!!!!」
[メイン2] クロエ : 「私はコッチね」
[メイン2] クロエ : 黒鉄の巨神が、装甲の一部をクロエに投げ渡す
[メイン2]
櫻 美鳳 :
さすがにもう叫んでいた。ウチは、情けないほどに涙を浮かべて
とうとう地べたを転げまわっていた。
[メイン2]
里見 灯花 :
なんて、痛そうな声……!!
今まで、聞いたことないような……!
[メイン2] クロエ : 楯というより、刃のような形
[メイン2] クロエ : そしてその巨神は里見に接近する
[メイン2]
櫻 美鳳 :
なんや なんや
くそっ! 痛すぎるわ……堪忍してくれっ!!!
早くせーへんとあかんのに……! 灯花が……死ぬ!!
[メイン2]
里見 灯花 :
魔力はからきし、傘ももう使い果たした。
……なら、後残るのは……
[メイン2] クロエ : 「…人間はよく体を痛めるよね」
[メイン2] クロエ : 「戦いに向いてないと思うよ?」
[メイン2] 里見 灯花 : 「……ああああっ!!!」
[メイン2] クロエ : 弾倉を取り替えて、もう一度櫻に射撃を繰り返す
[メイン2] クロエ : 頭
[メイン2] クロエ : 胸
[メイン2] クロエ : 腹
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「……っっっ……!!! あ ああぁあ……ぁ……!!」
[メイン2] クロエ : 弱点を狙い
[メイン2]
里見 灯花 :
傘を、その巨大な機械へと投げる。
囮にして。
[メイン2] 里見 灯花 : では、灯花は。
[メイン2] 里見 灯花 : その射線の前に出て。
[メイン2] クロエ : 「ん?」
[メイン2]
櫻 美鳳 :
───灯花?
[メイン2] クロエ : 「ああ」
[メイン2] 櫻 美鳳 : 全てがスローモーションになる。
[メイン2] クロエ : 「"順番がズレるな"」
[メイン2] 櫻 美鳳 : ウチの目の前には。
[メイン2] 里見 灯花 : その弾を、抉れるような痛みと共に。
[メイン2] クロエ : その引き金を持つ指は
[メイン2] 櫻 美鳳 : 弾丸の雨が降り注いでるはずなのに。今目の前にいたのは。
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「灯花ッ……!!!」
[メイン2] クロエ : 躊躇わない
[メイン2] 里見 灯花 : 「……おねえ、さま」
[メイン2] 里見 灯花 : 顔だけは、美鳳へと向いて。
[メイン2] クロエ : 「ミノタノス」
[メイン2] 里見 灯花 : 「……一生分の、パートナー……だった、よね」
[メイン2] クロエ : 巨体が、腕に仕込まれた機関砲を向ける
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「灯花ぁあ……!!!」
[メイン2]
里見 灯花 :
にこり、と笑って。
その笑顔すら、弾が痕を作って、消し飛ばしていく。
[メイン2] 櫻 美鳳 : 手を伸ばすことすらかなわない。それほどの一瞬。
[メイン2]
里見 灯花 :
「……でも、わたくしは……いい、から、いっぱい、おかね、あつめ……」
ぼそぼそと、呟くように。
[メイン2] クロエ : 轟音
[メイン2] クロエ : 炸裂
[メイン2] クロエ : 人間の指より少し大きい程の弾丸が、飛ぶ
[メイン2]
櫻 美鳳 :
「───灯……」
ウチは伸ばしきれない腕で、もう紙屑同然となった金をこれでもかとかき寄せ
思いっきり遮蔽物のある方向に、転がった。
[メイン2] 櫻 美鳳 : 灯花にその時。
[メイン2] 櫻 美鳳 : やっと手を伸ばそうとしながら。
[メイン2] 里見 灯花 : その手を、掴もうとして。
[メイン2] 里見 灯花 : ”つかまれた”
[メイン2]
里見 灯花 :
正確には、腕が吹き飛び。
その手が届いただけだった。
[メイン2] 櫻 美鳳 : ───待って
[メイン2] 櫻 美鳳 : 待ってや
[メイン2] 里見 灯花 : ばたり、と。
[メイン2] 櫻 美鳳 : ……なあ……!
[メイン2] クロエ : 「一人」
[メイン2]
里見 灯花 :
”最期”まで、にっこりと笑って。
子どもらしく、無邪気に。
[メイン2] 櫻 美鳳 : 届かない。交わした約束が脳裏を過ぎりながら。
[メイン2] 櫻 美鳳 : 受け取れたのは。
[メイン2] 櫻 美鳳 : その笑顔だけだった。
[メイン2] クロエ : その晩節に余韻は無い
[メイン2] クロエ : 死体の上に鋼の軍靴
[メイン2] クロエ : 巨神と人形、最後の一人を前に前進
[メイン2]
櫻 美鳳 :
───灯花が軍靴に踏み抜かれた瞬間
血飛沫ではなく、上がったのは『光の粒』だった。
そしてその瞬間、全てをウチは理解した……けれどウチは───
[メイン2] 櫻 美鳳 : 許せなかった。
[メイン2] クロエ : 「ミノタノス」
[メイン2] 櫻 美鳳 : ウチは遮蔽物から身を乗り出し。
[メイン2] クロエ : 軍靴は止まる
[メイン2] クロエ : 巨体は止まらない
[メイン2] 櫻 美鳳 : 紙切れ同然の貨幣を両腕に抱え込む。
[メイン2] クロエ : そんな様子を見る事も無く
[メイン2] クロエ : ベルトリンクを銃弾が滑り、砲弾が弾ける
[メイン2]
櫻 美鳳 :
「───」
刹那、紙切れが周囲を舞う。
抱え込んでいたそれも例外ではなかった。
[メイン2] 櫻 美鳳 : そして、その全てが。
[メイン2] 櫻 美鳳 : ───『閃光』をあげる。
[メイン2] 櫻 美鳳 :
[メイン2] 櫻 美鳳 :
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「『500万円』や」
[メイン2] 櫻 美鳳 : バリアーで、その砲弾を全て吹き飛ばす。
[メイン2] クロエ : 「おっと」
[メイン2] クロエ : 「ふうん」
[メイン2] クロエ : 「"残り"全部使ったの?」
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「……といっても500万円分も蜂の巣にされたのにウチも不思議やわ」
[メイン2] クロエ : 「ああそう」
[メイン2] クロエ : …先ほど投げられた
[メイン2] クロエ : 傘を拾って
[メイン2]
クロエ :
「"想いの力"って奴?」
にこり
[メイン2]
櫻 美鳳 :
「この『ゲーム』 どうやらウチの金を修復してくれたようやな」
そんな仕様ではない、もっと別の、そう……
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「『その通り』や」
[メイン2] クロエ : 「そうかい」
[メイン2] クロエ : 「そういうの」
[メイン2]
クロエ :
「私もあるんだ」
猟奇的に、笑い
[メイン2] : 掴んだ手は左腕。
[メイン2] : 『転換』
[メイン2] クロエ : 「…ん?」
[メイン2] : ただ、それが残されていて。
[メイン2] クロエ : 「あーらら」
[メイン2]
櫻 美鳳 :
「───でもな金は何のためにあるか知っとるか」
その腕の温もりだけは確かに伝わってくる。そしてこれが。
[メイン2] 櫻 美鳳 : 守りたかった もの
[メイン2] クロエ : 「あの"魔法"も君だったの?」
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「金は 金より大事な『命』 を守るためにあるんや」
[メイン2] クロエ : 「それじゃあ仕留め損だ」
[メイン2] クロエ : 傘を投げて、ソレ越しに射撃し
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「───500万円 いまので利子は倍付けで1000万円や」
[メイン2] 櫻 美鳳 : 刹那、ウチは。
[メイン2] 櫻 美鳳 : 人形の目の前から姿を消す。
[メイン2] クロエ : 「ッ!」
[メイン2] クロエ : 「大盤振る舞いってのはすごいね!」
[メイン2] クロエ : ミノタノスに号令し
[メイン2] クロエ : 楯の形に戻す
[メイン2] : 瞬間
[メイン2] : 『人形』の頭上から───重力
[メイン2] クロエ : 「とぉッ!」
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「守りの『バリアー』……灯花……守りを攻めに変えるってのはあんさんに教えてもらった事や」
[メイン2] クロエ : 楯の左右のウイングを支えに上空の攻撃に迎え撃つが
[メイン2] 櫻 美鳳 : バリアーはもはや巨大なエネルギー球となっていた。
[メイン2] クロエ : 重みに耐えきれず地表にクレーターが出来上がる
[メイン2]
櫻 美鳳 :
周囲の遮蔽物だったものも、全てが吹き飛んでいき───
砂鉄がその巨大なエネルギー球を形作る。
[メイン2] クロエ : 「おいおい、潰す気、か!」
[メイン2] 櫻 美鳳 : けれど、これも『タダ』ではなかった。
[メイン2] 櫻 美鳳 : 次々と金は弾け飛んでいく。
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「ああ」
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「1000万円 そしてまた倍付」
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「2000万円……4000万円……返してもらうで!!!」
[メイン2] クロエ : 「そうかい、随分儲けたな!」
[メイン2] クロエ : 「スラスター!受け止める!!!」
[メイン2] クロエ : 楯が火を噴いて、真正面から受け止めに行く
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「あんさんも……『願い』の為かぁっ!!」
[メイン2] クロエ : 「願い」
[メイン2] クロエ : 「あはは」
[メイン2] クロエ : 「違うよ」
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「違う?」
[メイン2]
クロエ :
「全部、真希の為だよ!」
にっこり、笑い
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「なーはっはっはっ……誰の為か知らへんけど……」
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「それも立派な」
[メイン2] クロエ : 更に膂力を引き上げて
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「『願い』やんかっっ!!!」
[メイン2] クロエ : 「あははははは」
[メイン2] クロエ : 「ならいいや」
[メイン2] クロエ : 「じゃあ私の願いは真希だ!」
[メイン2] クロエ : 「────だから」
[メイン2]
クロエ :
「お前は死んでくれよ!!!」
力を込め直して、煙を吹く
[メイン2]
櫻 美鳳 :
「せや! 殺してみぃ! ウチはな、灯花の仇を取る───それが願いや!
願いある者同士な……後腐れ無しやッッッ────!!!」
[メイン2]
櫻 美鳳 :
散っていく。金。
残り100万を切る───
[メイン2]
クロエ :
「そうだね!分かりやすいなぁ!!」
楯の機構がエラーを吐き出す、過負荷に体が軋む
[メイン2] 櫻 美鳳 : 後腐れ無し。でないと全部、嘘になってまうやろ……なあ
[メイン2] 櫻 美鳳 : 灯花。
[メイン2] クロエ : 「でも」
[メイン2] クロエ : 「ああ、負けられないから」
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「それはこっちの台詞や」
[メイン2] クロエ : 楯を、手放し
[メイン2] クロエ : 蹴りあげて
[メイン2] クロエ : 「ミノタノス」
[メイン2] クロエ : 「行ってきてね」
[メイン2] クロエ : 楯が変形して、人型となり
[メイン2] クロエ : 受け止める動きから、滑るように、その重量を抜け出しに行く
[メイン2]
櫻 美鳳 :
「なーっはっはっ!! ───待っとったで、それを」
「よかったわ、あんさんが……あのフードと『ウチら』の闘いを見とらんくてな」
[メイン2] クロエ : 「ふふ」
[メイン2] クロエ : 「怖いなぁ」
[メイン2] クロエ : にこりと笑ったまま
[メイン2] 櫻 美鳳 : バリアーは、もう押しつぶす役目を終える。
[メイン2] 櫻 美鳳 : ウチは、バリアーを真にエネルギー球として使おう。
[メイン2] 櫻 美鳳 : ───不思議とまだ力が湧いてくる。これも灯花、あんさんのおかげやからな。
[メイン2] 櫻 美鳳 : だから『もう一度』……使わせてくれな……!
[メイン2] 櫻 美鳳 :
[メイン2]
櫻 美鳳 :
レールガン
『電磁砲』
[メイン2] 櫻 美鳳 :
[メイン2] 櫻 美鳳 : 轟音を上げ、発射する。
[メイン2] クロエ : 「…ッ!」
[メイン2] クロエ : 「ミノタノス!」
[メイン2] クロエ : 「投げろ!!!」
[メイン2] クロエ : 抜け出す事を即座に放棄、最善を選ぶしかない
[メイン2] クロエ : 多分五体満足は"無理"だ
[メイン2]
櫻 美鳳 :
押せ押せ押せ押せ押せ押せ───!
これはなぁ ウチと……灯花の……!!!
[メイン2] クロエ : ミノタノスも無理だろう
[メイン2] クロエ : 私も大分痛手だ
[メイン2] クロエ : でも
[メイン2]
櫻 美鳳 :
なはは……まぁ逆やけど……
『打ち上げ 花 火』やッ!
[メイン2] クロエ : 「…いいよ」
[メイン2] クロエ : 「どっちが死ぬか賭けよう」
[メイン2] クロエ : ミノタノスは
[メイン2] クロエ : 支えるのをやめて
[メイン2] クロエ : 私自身の体を瞬間、真っ二つに叩き割って
[メイン2] クロエ : 上半身だけ、ぶん投げる
[メイン2] クロエ : 「此処までやって巻き込まれたら」
[メイン2] クロエ : 「私の負けだ」
[メイン2] クロエ : 投げる動きで姿勢を崩したミノタノスは
[メイン2] クロエ : そのまま光に吞まれる
[メイン2] クロエ : 残った下半身も助からないだろう
[メイン2] クロエ : じゃあ、投げた腰から上は
[メイン2] クロエ : …どうなるんだか
[メイン2] クロエ : 最後、真希に誓い
[メイン2] クロエ : 瞳を閉じた
[メイン2] 櫻 美鳳 :
[メイン2] 櫻 美鳳 :
[メイン2] 櫻 美鳳 :
[メイン2] 櫻 美鳳 : 『0』
[メイン2] 櫻 美鳳 : 残金0円。
[メイン2]
櫻 美鳳 :
ウチの身体は一糸まとわぬ姿となり、衝撃波に飛ばされ
上空十数mから落下を始めた。
[メイン2] クロエ : スパークを散らし
[メイン2]
クロエ :
[Leg-100%Lost]
[Body-73%Lost]
[Arm-56%Lost]
[メイン2] クロエ : 上半身を一部、右腕、頭
[メイン2] クロエ : それだけ、残って
[メイン2] クロエ : 「落ちるのか、じゃあ」
[メイン2] クロエ : 「…死んでも、引き分けじゃ、ないですか」
[メイン2]
櫻 美鳳 :
「───そーゆーことになるな」
なぜかこの一瞬が何十秒、何百秒と感じた。
[メイン2] クロエ : 露出したセンサーで、それを眺める
[メイン2] クロエ : 「あ、ははは」
[メイン2] クロエ : 「何もできないんで」
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「なーはっはっはっ……」
[メイン2] クロエ : 「最後くらい、見ときますか」
[メイン2] クロエ : 右腕で、体を起こす
[メイン2] クロエ : 酷く軽くなったので、問題なく
[メイン2]
櫻 美鳳 :
「おうおう 見ときぃ見ときぃ~……」
どうせ、ここはゲームの世界。
そしてやっと疑問も解けた。灯花も、フード野郎も、この人形も、皆……別の世界から来たんやって
[メイン2] 櫻 美鳳 : 仮想世界。
[メイン2] 櫻 美鳳 : ……けれど、まぁ……なんやろな
[メイン2] 櫻 美鳳 : きっとゲームオーバーになれば。この世界での記憶はなくなるんだろう。
[メイン2] 櫻 美鳳 : あるいは夢として処理され、いつもの日常に戻るのだろう。
[メイン2]
櫻 美鳳 :
だからここでのウチは『死ぬ』事に変わりはない。
灯花も……『同じ』
[メイン2] 櫻 美鳳 : そう考えると、やっぱ
[メイン2] 櫻 美鳳 : 涙が
[メイン2] 櫻 美鳳 : 宙を舞う。
[メイン2] 櫻 美鳳 : 「悲しいわぁ~~……」
[メイン2] 櫻 美鳳 : そう、ポツリと呟いた。
[メイン2] テネブレア :
[メイン2] テネブレア :
[メイン2] テネブレア :
[メイン2] テネブレア : 「ふふっ……あははっ!願いを持った貴方はやっぱり素敵ねぇ………」
[メイン2] クロエ : 「…?」
[メイン2]
クロエ :
「見てたのか」
[メイン2]
テネブレア :
「でも…こんな姿になったら…何も出来ないわよねぇ…」
クロエを抱き抱える
[メイン2] テネブレア : 「あぁ…可哀想に…願いも叶えられないまま尽きようとするなんて…」
[メイン2] クロエ : 「真希の為だからこれくらいはできるよ?」
[メイン2] クロエ : 残った腕に握った銃器をデネブレアに向ける
[メイン2] テネブレア : 「まぁ…私の力を使えば元に戻せるんだけど…」
[メイン2] クロエ : 「へぇ」
[メイン2] テネブレア : 「貴方は今の姿で会いたいのかしら?」
[メイン2] クロエ : 「いやだよ」
[メイン2] クロエ : 「真希の為だ」
[メイン2] クロエ : 「全身無いと」
[メイン2] テネブレア : 「ふふっ…あはははっ…なら治してあげる…」
[メイン2] クロエ : 「ふうん」
[メイン2] クロエ : 「でも真希の為だから」
[メイン2] クロエ : 「治してもらっても多分殺しに行くぞ?」
[メイン2] テネブレア : 「それも良いわねぇ…わたしが愉しめそうだもの」
[メイン2] クロエ : 「そうか」
[メイン2] クロエ : 「変な奴」
[メイン2] テネブレア : 「ふふっ…じゃあ…直すわね…」
[メイン2] クロエ : 「わかったよ」
[メイン2] テネブレア : 「ほら、元通りよ」
[メイン2] クロエ : 「…っと」
[メイン2] テネブレア : 「貴女の体は何ともないでしょ?」
[メイン2] クロエ : 「…人間じゃないだろ、やっぱお前」
[メイン2] クロエ : 五体満足に、戻った
[メイン2] クロエ : そんな異常に、すぐに浮かぶ疑問
[メイン2] テネブレア : 「どうかしらね?人間だった時もあった気がするのだけれど…忘れたわ」
[メイン2] クロエ : 「化け物ってやつか」
[メイン2] クロエ : 「…まぁいいや」
[メイン2] クロエ : 「真希を迎えに行かないと」
[メイン2] テネブレア : 「さぁ…貴女の愛おしい彼女に逢いに行ってあげて」
[メイン2] テネブレア : 「きっと…素敵な事になってるのだから」
[メイン2] クロエ : 「…」
[メイン2] クロエ : 「ああ」
[メイン2] クロエ : 傷一つなく
[メイン2] クロエ : 戻ってきたミノタノスを、盾に戻し
[メイン2] クロエ : 人形は、その心のままに
[メイン2] テネブレア : 「さーてと」
[メイン2] テネブレア : 「まだ生きてるのかしらねぇ…?」
[メイン2]
:
そこには何かがぶつかったへこみはあったが。
───もうそこには電子の粒へと変わっていく
[メイン2] : 無数の『傘』の残骸しかなかった。
[メイン2] :
[メイン2] :
[メイン2] : 『傘』の残骸が。
[メイン2] : ふわりと、舞って。
[メイン2] : 導かれるように─────
[メイン2] :
[メイン2] :
[メイン2] :
[メイン2] :
[メイン2] :
[メイン2] :
[メイン2] : ぱたん、と本を閉じる音が静かな病室に響く。
[メイン2] : 「と、いうのがぼくが考えた物語だよ」
[メイン2] : 「最も、君には”想いの力”がすべてを覆す」
[メイン2] : 「なんて、”合理的”ではない、と言われそうだね」
[メイン2] 里見 灯花 : ────目を、ゆっくりと開く。
[メイン2] 里見 灯花 : 「…………」
[メイン2] : 「……もしかして、睡眠を貪っていたのかい?」
[メイン2] 里見 灯花 : 「目を閉じて、脳が海馬で記憶した事象を頭の中で引き起こしてたっていうなら、そうかもね」
[メイン2] 里見 灯花 : なんて、口から発される。
[メイン2] 里見 灯花 : 「……でも」
[メイン2] 里見 灯花 : 「その物語は、”合理的”でも”現実的”でもない」
[メイン2] 里見 灯花 : 「……だからこそ、いいんだろうにゃー」
[メイン2] : 「………驚いて言葉が紡げなかったよ。君なら一蹴りしそうなものだと試行していたよ」
[メイン2] 里見 灯花 : 「……はいはい」
[メイン2] 里見 灯花 : 目を、逸らす。
[メイン2] 里見 灯花 : ────『脳細胞の一つ残らず覚えたよ』
[メイン2] 里見 灯花 :
[メイン2] 里見 灯花 :
[メイン2] 里見 灯花 :
[メイン2] 里見 灯花 : わたくしの記憶力を、見くびらないで欲しいね。
[メイン2] 里見 灯花 : そうだよね────
[メイン2] 里見 灯花 :
[メイン2] 里見 灯花 :
[メイン2] 里見 灯花 :
[メイン2] 里見 灯花 : ────メイフォンお姉さま。
[メイン2] 里見 灯花 :
[メイン2] 里見 灯花 :
[メイン2] 里見 灯花 :
[メイン2] 里見 灯花 : くふっ。
[メイン2] 里見 灯花 : この世界、いや…この”宇宙”を探したとしても、絶対に重ねられない天文学的な確率で、わたくし達は出会ったわけだから。
[メイン2] 里見 灯花 : 「……これくらい、覚えてたっていいじゃん」
[メイン2] 里見 灯花 : 途端、灯花の体に静電気が走る。
[メイン2] 里見 灯花 : 「に゛ゃっ!?」
[メイン2] 里見 灯花 : 「な、なにがあって……あ」
[メイン2] 里見 灯花 : 走った背中を見ると、そこには一枚の一万円が。
[メイン2] 里見 灯花 : ………。
[メイン2] 里見 灯花 : 手に取って、よく見ると。
[メイン2] 里見 灯花 : それは、文字を書かれて”価値”を失ったお金であった。
[メイン2] 里見 灯花 :
[メイン2] 里見 灯花 :
[メイン2] 里見 灯花 :
[メイン2] 里見 灯花 : ────『幸せに過ごしーな』
[メイン2] 里見 灯花 :
[メイン2] 里見 灯花 :
[メイン2] 里見 灯花 :
[メイン2] 里見 灯花 : 「…………っ」
[メイン2] 里見 灯花 : 「……もちろんだよ」
[メイン2] 里見 灯花 : そのお札をぎゅっと、抱き締めて。
[メイン2]
里見 灯花 :
ずっと伝えれらなかった、この胸を鼓動させる不思議な生理現象。
きっと、わたくしには生涯ないと思っていた、あるもの。
[メイン2] 里見 灯花 : それは、2文字で表せられる。
[メイン2] 里見 灯花 :
[メイン2] 里見 灯花 : 「好き」
[メイン2] 里見 灯花 :
[メイン2] 里見 灯花 : ……そのまま、ゆっくりと。
[メイン2]
里見 灯花 :
瞳を閉じた。
……きっと届かない、だろうけど……なんて。くふふっ。
[メイン2] 里見 灯花 :
[メイン2] 里見 灯花 :
[メイン2] 里見 灯花 :